こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

中央アジア60 ウズベク入国 コーカンドへ

今日はウズベキスタンへ国境を越える。目指すは東のフェルガナ盆地だ。正確なルートは覚えていないが、たしかイスファランまでミニバスで行き、タクシー(12ソム)に乗り換えカニバダムに向かい、そこから更にタクシーを乗り換え越境ポイントに着いた記憶がある。

荒れた砂地が続き道中に民家は少なかった。交通量も少なくタクシーは猛スピードで走る。左手には大きな青い貯水湖があり、白い砂に青がよく映えていた。飛ばすタクシーの中で僕はすごくドキドキしていた。なんせ久しぶりの一人での国境超えだ。カザフにしてもキルギスにしてもタジクにしても、グループでの移動だったから誰かが手助けしてくれたが、今回は一人で対応しないといけない。加えてこの交通量の異常なまでの少なさだ。無事に出国できるか、難癖を付けられないか、入国拒否されないか等々不安が頭に渦巻いていた。

さていよいよ国境に着いた。タクシーを降り周囲を見渡したところ、僕以外に人はいない。マイナーな国境とは予想していたが、まさかここまで疎とは思わなかった。ともあれ進むと最初に出くわしたのは二人組の暇そうな軍人だった。彼らは興味がなさそうにパラパラとパスポートをめくっている。ろくすっぽ確認もせずに僕に投げた一言はなんと「マネー」だった。またかとうんざりした。説明するまでもなく正規の手数料や出国税ではない。単純に、払わなければ通さないと言っているのだ。通常ならば突っぱねるところだが、周りに猫一匹いないここでは議論のしようもない。なんせ1対2なのだ。やむなく余っていた10ソモニ(170円ほど)を渡すことにした。公務員の規律はこの国にはない。

昼食休憩のため1時間待たされたが、出国手続きそのものは特にトラブルもなくスムーズに済んだ。それに対してウズベク入国は非常に煩雑だった。徹底した荷物検査とカメラの画像確認に加えて、所持しているお金(円、ドル、元、テンゲ、ソム、ソモニ、バーツ)やトラベラーズチェックの確認と登録があるのだ。この登録処理だけで30分以上かかる。暇な国境だからまだいいようなものの、往来の多い国境だと明らかにパンクするのではないだろうかと思った。しかし巷で言われていたような賄賂要求はなく、タジクから来たから余計そう思うのかもしれないが、非常に規律的で礼儀正しかった。

無事ウズベク入国を果たし、マルシュルートカ、ミニバスを乗り継いで、コーカンドに着いた。まだウズベキスタンのお金を持っていなかったが、タジクソモニがここまでは通用した。まずは宿探しだが、下調べしていたヤンギバザール近くのニギナホテルにしようとバザールまでやって来た。

だがいざ来てみるとホテルが見当たらない。潰れたか移転したか?周りにいた人たちに聞いてみたが、誰も知らなかった。客待ちをしていたタクシードライバーに声を掛けると、ただ「車に乗れ」と言った。状況がよく分からないまま乗り込むのはさすがにまずい。しかもお金も持っていない。それでも乗れと言うので、あまり深く考えずに車に乗り込んだ。ドライバーは人に聞きながら色んな方向に車を走らせた。あまりに遠いところまで行くものだから、人気のない所で金品を巻き上げるつもりかもしれないなあと思い始めた頃に、ポツンと佇む「ニギナホテル」は現れた。随分と遠くに移転していたのだ。ドライバーは何も言わず去っていった。疑って申し訳ない。彼は通りすがりの旅行者を、何の見返りも期待せずにタダで自分のタクシーに乗せたのだ。