こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

ウルムチから蘭州へ

9月12日

数日ウルムチでのんびり過ごした後、上海まで鉄道で戻ることにした。しかし予想した通り切符がなかなか取れない。作戦を変更してどこか乗り継げる都市がないかと電光掲示板を眺めていたところ、9月12日深夜4時発の蘭州行L108が異常に空いていたのでこの便の硬臥を予約した。

出発の日、2時30分に目覚まし時計をかけ、駅まではタクシー(15元)で行った。駅構内は真っ暗で、500人ほど収容できるがらんとした待合室にはわずか20人ばかりの客がいた。いつもと勝手があまりに違うので強い不安を覚える。深夜4時発というのも普通ではないし、この便だけが異常に空いていたのも気になっていた。何かの手違いで空の切符だけ販売されたのではないかと疑ったのだ。

列車はちゃんとやってきたが、同じ車両に客は3人しかいない。しかもシーツが敷かれておらず、自分でベッドメーキングをしなくてはならない。車内販売もなければ売り子もいなければ食堂車も営業していない。こんな、ないない尽くしの中国鉄道は初めてだ。キツネにつままれた気分のまま硬臥で横になった。

列車は定刻通り出発した。本当に蘭州に行くか疑念を抱いていたが、どうやら東には向かっているようだ。昼頃にはある駅からと乗客ががやがやと乗り込み、それで3分の1ほどの座席は埋められた。


長時間の鉄道旅で食料や水を得る機会がほぼないことが、この列車の致命的な欠点だった。水分補給といえば、途中の駅で売り子からハミクワを買ったくらいだ。熱湯はあるのでお茶を淹れることはできるが、もしなければ確実に脱水を起こしていただろう。
時刻表がなく到着時間のめどが立たないことがストレスだ。ほかの列車と比べて異常に遅いことだけは分かる。20時間ほどで蘭州に着くかと予想していたが、24時になってもまだまだ目的地は遠いようだった。
2回目の朝を迎えた。何をするでもなくただ心を無にして過ごしていた。到着は13日の10時。実に所要時間30時間だった。