こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

中央アジア29 2011年中央アジアの移動について

中央アジアは小さな地域であるが、ルート取りは複雑怪奇で旅行者を悩ませる。ビザ、国境、疎な交通網、そして地形の4要因が都市間の自由な移動を制限するからだ。この複雑さは、中国旅行と比較してみるとよく分かる。中国旅行の場合は、とりあえず地図を眺めて、行きたいと思う所に印を付ければいい。もし目的地が複数あるなら、訪問したい順に印を線で結べばいい。あとは鉄道駅に足を運んで切符を買うだけだ。しかし中央アジアでは、このマッピングするやり方は通用しない。

一例として、ビシュケクからウズベキスタンの首都タシュケントに向かう場合を考えてみよう。地図上は、カザフスタンのタラズ、シムケントを経由する道(赤い線で示したルート)が最も距離が短そうに見える。というより、道路があまりにも無さ過ぎて、その一択しかなさそうだ。しかしビシュケクタシュケントを結ぶバスはない(2011年時点)。ウズベキスタンがテロを恐れて外国車両の乗り入れを禁じているからだ。従って、ウズベク‐カザフ国境からタシュケントまでは、(わずかな距離であるが)自分でアレンジする必要がある。バスを乗り継いでようやく国境までたどり着いたと思ったら、そこからさらに最後にタクシーというのは、いかにも面倒ではないだろうか。いや、煩わしいのはこれだけではない。出発する前に経由国であるカザフのビザをあらかじめ取得しておく必要がある。これだって数日かかる。そして一番の落とし穴が国境閉鎖だ。中央アジアの国は旅行者のあずかり知らない諸事情によって国境が頻繁に閉鎖される。実際に2010年には、このカザフ-ウズベク国境は開放されていなかった。だからそれを知らずにうっかりバスに乗ってしまうと、目的地まであともう一歩のところで門前払いを食らう可能性があったのだ。似たようなことはタジク-ウズベクでもある。(タジキスタンのペンジケントとウズベキスタンサマルカンドを結ぶ国境も長年閉鎖されているため、この直線距離にして50kmの移動に丸二日を要する。)その他、地域住民は通過できるけれど第3国の人間は通過できない国境も数多く存在する。だから地図だけ見て行けるかどうかを判断してはいけないのだ。

さてビザが頭痛の種になるのはもう1点ある。通過国であってもビザを1回分消費してしまうことだ。つまり同じルートを単純往復する場合、2回分のビザを準備する必要がある。したがって、ビザ取得時点でシングルビザにするか、ダブルビザにするか決めておかないといけない。こうして実際に多くの旅行者が考えるのは、国の重複を避ける一筆書きである。

さて、それではウズベクビザを持っているとして、ビシュケクからタシュケントに行こうと思いついてから、最短日数で到着するのはどういったルートになるだろうか。実は、青線で示している、キルギス南部からフェルガナ盆地のアンディジャンを経由してタシュケントに至るルートが一番シンプルな経路なのである。

幹線道路に限定しなければ、もっと直線的なルートがあると考える人があるかもしれないが、これは地図の縮尺の問題ではなく、道そのものが存在しないのだ。

 

要約すると、と言いたいところだが要約できないのがこの地域を旅行する複雑さである。