こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

中央アジア38 

ホワイトボードのアドレスからは直ぐに返信があった。フランス人カップルからだった。翌朝、打ち合わせのためオシュゲストハウスに赴いた。僕の他にあと一人、ナヴィルというアメリカ人が加わり計4人が揃ったのでいつでも出発できるという。車とドライバーの手配も済み、早速明日出発の手筈となった。

ちなみにこのカップルはオシュゲストハウスの客ではない。オシュゲストハウスの掲示板は宿泊客でなくとも利用できるので、無理にここに泊まる必要は無いのだ。それに気付いて、シャワーに飢えていた僕は再びホテルアライに戻ることにした。オシュゲストハウスに連泊していたナヴィルは皮肉交じりに「I LOVE OSH.I LOVE O.G.H.」と呟いたが、オシュゲストハウスの客は、どうやってこの酷暑と汗に耐えていたのだろうか?しかしそれ以上に不思議なのが、旅行者が迷いもせずに団地の一室にたどり着いていることである。

 

オシュゲストハウスを出てアライに戻る道中で、台湾と韓国の女の子に出会った。台湾の女の子はビシュケクの宿で見かけたので覚えている。ホットパンツから伸びるふくよかで長い白い足が印象的だった。もっとも言葉を交わした記憶はない。僕は気付かないふりをし、目を伏せて通り過ぎようとした。しかし彼女は行く手を阻むように立ちはだかり僕を呼び止めた。オシュゲストハウスまでの行き方を教えてくれと言う。無視するつもりだったのが、話し掛けられると緊張してしまい、不必要に細かく道順を説明してしまった。

 

すると彼女はこれからの予定を聞いてきた。タジクに行く話をすると、オシュに着いたばかりだというのに同じ車に乗せてくれと頼んできた。ちょっと図々しいと思った。こういう頼み事を平気でできることが少し癪に障った。僕は事務的に、もう定員が充足しているから空席は無いと告げた。僕が断った時、隣にいた韓国の女の子は心なしか安堵しているように見えた。一方の僕は、お願いを却下することが出来て、少しばかりの優越感を得たような気がした。きっとそれはこちらが脳内で勝手なストーリーを描いているに過ぎないのだけれど。

この日は久しぶりのビールを飲んだ。かなり酔いが回った。明日に備えて早く寝付けるようにと飲んだのが、逆に緊張と興奮を呼び覚まし目が冴えてしまった。高地パミールへの旅は、これまでのようには行かないだろう。僕は体力に自信がなかった。オシュをいよいよ離れるかと思うと見慣れたスレイマン山が愛おしかった。