こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

ベトナム縦断14 フエ ティエンムー寺

2011年2月28日 

今朝は霧が濃い目だ。ベランダに出ても昨日は見えたインペリアルホテルが見えない。
朝はズオンノー村にあるホーチミンの家を訪ねる。香江東岸を北上して橋をくぐったところのビール工場を右折。そこから10分進むと小さな川に出るので、そこを渡って100m遡ると着く。特に何もないが、フエ郊外の鄙びた雰囲気を楽しめる。

あと忘れてならないのが香江北岸にあるティエンムー寺。七重の塔が町のシンボルになっている。ティエンムー寺を有名にしているのは、この寺の僧侶ティッククアンドゥックだ。1960年代、キリスト教徒である南ベトナム大統領ゴディンジエムは仏教徒に対して弾圧を加えた。これに抗議するため、1963年ティッククアンドゥックはサイゴンまでみずから運転しアメリカ大使館前で焼身自殺した。この映像は世界中を駆け巡り波紋を呼んだ。一方で、ゴディンジエム弟の妻マダムヌーはこれを「バーベキュー」と揶揄。「反南ベトナムなのに輸入したガソリンを使うのは自給自足じゃないし矛盾してるわ。なんなら我々がマッチとガソリンを提供するわ」と皮肉った。当然、世論の激しい反発を招き、のちのジエム大統領暗殺へとつながっていく。どうしてこうも権力を持ったマダムは炎上してしまうのかな。
なおティッククアンドゥックが、現代における仏教徒焼身自殺の起源ではないかと思う。彼の行動が巡り巡って、中国の特異なセキュリティに繋がっているのかと考えると歴史の因縁を感じずにはいられない。

さて、ビザがフエで取得できないことを受けて、どうしようか思案していた。他の町であればもう少し短期で取れる可能性もある。しかしそれも不確実だし、同じ町に何日も拘束されるのも面倒だ。ビザなしで滞在できるのは2週間。ならば一旦ベトナムを出国し再入国すれば滞在日数がクリアされ、また2週間ビザなしで滞在できるだろう。このように形式的に出国入国を行うことで滞在日数を延ばすことをビザランと総称する。厳密にはビザを再取得し滞在日数を延ばすことだが、実質的にはビザランと呼んでいいだろう。地図を見ると、フエの最も近くでビザランができそうなのはラオバオ国境だ。ベトナム側ドンハーとラオスのサワンナケートをつなぐ国境である。明日はビザランの日に決まった。

あとは具体的な交通手段だ。ドンハーとラオバオを往復するバスはあるだろうから、まずはドンハーまで行ければいい。ドンハー行きのバスは都城区北西にあるフィアバックバスステーションから出発するらしい。この町はずれのバスステーションの位置を確認するため、夕方に歩いて探しに出かけた。ところがどうも見つからない。地元の人に「Ben Xe(バス停)?」と聞くとみんな北を指さすのでひたすら北へ北へと進む。すると町を完全に抜けてしまうので、改めて人に道を尋ねると今度は南を指さす。で南に進むとまた元の場所まで戻って来る。もう一度北へ進めるだけ進むと民家のないところにまで行ってしまった。その頃には日も完全に沈んで真っ暗だったので、たまたま通りがかったセーオムを捕まえて旧市街まで戻ったのだった。合計10㎞は歩いただろうか?いまだにこのバスステーションの場所を確認できていない。

実はベトナムではバスは2種類ある。一つは公共バスで、もう一つは旅行会社が運営するオープンツアーバスである。オープンツアーバスはやや割高なのだが、町の中心で発着するし値段交渉が不要なのでその点は便利だ。公共バスに乗るのに値段交渉が必要で、ツーリストバスでは不要というのは逆な気もするが、それがベトナムである。
ホテルでドンハーまでのオープンツアーバスを手配してもらうことにした。ドンハーはフエの北50㎞に位置する。ドンハー自体には何も見どころがなく下車する人はいないはずだから、おそらく周辺を観光するバスに便乗する形になるだろうと予想した。

値段は5ドルと公共バスの倍以上だが、バスステーションまで行く時間と費用を考えるとトータルでは安い。そもそもバスステーションに下見に行った帰りのセーオム代が3ドルだったのだ。