こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

ベトナム縦断11 ニンビン

2011年2月25日 
海外旅行に出ながら言うのもなんだが、僕は泊まりの旅行よりも日帰り旅行を好む。泊まりになると荷物と心配事が増えて自由がなくなるからだ。日帰りだと極端な話、手ぶらで気ままに出掛けることが可能だ。何かあってもいずれ戻ってくると思えば気が楽だ。更に言うと飛行機や新幹線よりも、時間が倍かかっても自家用車での移動がいいのだが、話が逸れていくのでこの話はやめる。

ガイドブックを見ると分かるように、ハノイから南はフエに至るまで観光の空白地帯が続く。フエまでバスだと12〜16時間かかるが、これはちょっとした拷問だから寝台列車にした。ハノイに着いた翌朝、今日19時30分発のsoft bedを予約しておいたのだ。570kドン=2280円程度。宿代込みと考えると高くはない。だからそれまでの時間、ちょっと近くまで遠足に出掛けることにしたのだ。

久しぶりの日帰り旅行は気分が浮かれる。まずバスに2時間乗りニンビンに辿り着いた。ニンビン周辺は968年に初めて北ベトナムを統一した丁朝がホアルーを都と定めた由緒正しき地であるが、現在はとても静かな郊外の町だ。目的地は北ベトナムカルストシリーズの一つ、タムコック。僕が勝手に北ベトナムカルスト3兄弟と呼んでいるのだが、長男は言うまでもなくハロン湾、次男がカットバ島、そして三男が今日のタムコックである。最近は空白の北中部に新しく世界遺産の鍾乳洞が登場したそうだ。

タムコックの魅力を肌で感じたいなら、レンタルバイクの選択肢は検討に値する。道中の雰囲気がたまらなく素晴らしいからだ。路面状況はさほど良くない。だが交通量の少なさが秘境感を醸し出している。
ホアルーからタムコックへ向けて走り出すと、さっそく切り立った奇岩に囲まれる。霧がかかって山の上部ははっきり見えない。山に道が吸い込まれていくかと思うと向こうはトンネルだ。トンネルを抜けるとまた霧のかかった奇岩たちが現れる。こうしてしばらく進むと道路に沿って川が流れるようになり、川下りを楽しむ人たちで賑わっている。しかしほっとするのも束の間で、更に進むと人気がまた少なくなってくる。今度は、水を湛えた田や緑青の湖から岩が聳え立つのだ。やはり一帯は絶えることのない霧で覆われ、幽玄の世界が広がっている。
こんな素晴らしい場所をバイクで疾走することが出来たのは本当に痛快だった。三男タムコックの面目躍如だ。穂が垂れる実りの秋はまた違った表情が見られるかもしれないが、観光客の少ない冬も悪くない。ただ、実は川下りは面倒だったのでしていない。移動がタムコックでした全てだ。

ニンビンでの昼夕を兼ねた食事は名物ヤギ料理だ。ヤギ肉は思ったほど臭みもクセもない。ただ皮がかなり硬く、3人前くらいあるヤギ肉を食べ終わったときには、右の奥歯が折れたのではないかと思った。それと食べ終わってから一日中、体がカッカして熱かった。

ハノイに戻ると列車の出発時刻ギリギリで、乗り遅れそうになった。しかしそこはハノイ、そういうおっちょこちょいを相手にちまちまと小遣い稼ぎをする人たちがいる。目的のプラットフォームへ案内するベル係のようなおじさんがいたのだ。もっとも、出発15分前に駅に着くようにしていれば、こういう胡散臭いおじさんと関わらなくて済むのだが。
Soft sleeperは、一つのコンパートメントの中に2段ベッドが2個、つまり4人定員だった。カーテンはなかったので、プライバシーがあまり保たれない。今回僕は上段だったが、ベッドはやや狭く圧迫感を感じる。シャツを着替えてスッキリとして横になった。鈍行列車なのか、急行列車が何度も追い抜いていく。クーラーがよく効いていた。