こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

ベトナム縦断10 ハノイ

2011年2月24日

このホテルは安宿なのにBBCが映る。海外で見るBBCは一種の贅沢だ。たまに自分が今いる場所がニュースの舞台になっていると誰かに自慢したくなる。しかし一番のコンテンツはカウントダウンだと思う。長く流れる時は素直にうれしい。旅の高揚感をこれ以上駆り立てる音楽を僕は知らない。
少し似た音楽で思いつくのはDavid fosterのwinter games。カルガリーオリンピックのテーマ曲だが、むかし関西ローカルFM802のヘッドラインニュースでも使用されていたことがある。(現在も関連局では流れている)。今考えてみると、FM802の先取精神に富んだスタッフが、BBCカウントダウンを意識していたのかもしれない。ニュース内容も海外ニュースがやたらと多くて、1990年代中頃には毎日チェチェン紛争の戦況が流されていた。グロズヌイという地名を覚えたのもラジオからだ。日本人には興味も利害も無かったと思うけど野暮なことを言わない時代だったのかも。

ハノイ旧市街にはビアホイと呼ばれる生ビールを出す店がたくさんあり、一杯10円の安いビールを求めて旅行者たちが集まる。不幸にもホテル前の丁字路角がビアホイだった。昼間の風情はどこへやら、酔っ払いたちが奇声をあげるのでベランダから引き上げ扉を閉めた。しかしコロニアルなこのホテルの薄い扉はすき間だらけで、音の侵入を防ぐ役目を全く果たさなかった。旧市街に泊まる場合、ノイズに対する覚悟を持つことが必要だ。だが24時を過ぎると静かになるのでご安心を。それまでは賑わいも味わいと言い聞かせてやり過ごそう。あるいは簡単に、高級ホテルに泊まればこの問題は解決する。

朝食はビュッフェスタイルだった。パン、焼きそば、粥、ハム、ベーコン、コーヒーをこれでもかというくらい食べた。1日分の必要カロリーとタンパク質は摂取したと思う。ビュッフェはお腹がはちきれるまで食べるものだという思考回路を誰か直して欲しい。

ハノイ観光でどこを回るべきかアドバイスめいたことは言えないが、ホーチミン廟はベトナムの歴史を思い起こす上でも見落とすべきではないと思う。廟内部は10メートル四方で、四隅に衛兵が立ち、堀に囲まれたガラスケースの中に防腐処理を施されたホーおじさんが眠っている。これはマダムタッソーの蝋人形ではない。廟内は私語厳禁で立ち止まらずに速やかに移動することが求められていて、笑うことも禁止されている。衛兵があまりにも微動だにしないので、実は4人のうち1人は蝋人形が紛れ込んでいるのではないか?という疑問がふと浮かぶと噴き出しそうになったので、慌てて外に出た。

個人旅行者が一番行かなさそうな博物館は民族学博物館だ。調べた限りでは旧市街から直接向かうバスはなく、9番バスで終点まで行ってからバイタク(25kドン)に乗って行った。到着時間が遅くなりすぎて入場時間を過ぎていたが、ここに到達するまでいかに苦労したかを滔々と述べると、さっさと退館することを条件に入れてもらえた。なお帰りは7番バスと55番を乗り継いで帰ってきた。どうもカウザイバスターミナルで乗り換えるのが確実なようだ。9番+7番とか55番+7番とか。まあこれは2011年の話だから役に立たないと思う。ただ、既存の交通機関をどのように組み合わせて目的地に辿り着くかを考えるのは旅の醍醐味の一つだから、ちょっと無理して遠出してみるのも達成感が得られて楽しい。

ハノイに来てから日中の気温が20度を超えるようになり、日中はTシャツ一枚でも快適に過ごせるようになった。薄日が差し込み温かさを感じられる時がある。けれども、日本を出てからというもの、まだ一度も青空を見ていない。冬の北ベトナムは四六時中雲に覆われているのだ。