こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

中央アジア49 ガラムチャシュマ温泉

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僕はドライバーにいくら払うべきかをしばし考えていた。ムルガブからホログまでの車代は470ドル。うち半分の235ドルを前払いしているから残金235ドルだ。(ちなみにオシュからムルガブまでは2768キルギスソム=62.5ドル)

つまり3人で割ると1人当たり78ドルとなる。これに上乗せするチップをどれだけ積むかで頭を悩ませていた。80ドルでもルール的には別に構わないが、一人たった2ドルのチップはいかにもケチった感が強く、それならむしろチップなしの方がすっきりする。とすると一人12ドルの90ドルが適正ラインか?ただ実のところ僕は、一人100ドルでも良いんじゃないかとぼんやり考えていた。このガイドは素敵なガイドだった。ワハーンに住みワハーンを愛する一人の人間として、我々にその魅力を伝えてくれた。ここには書いていないが、愛らしい家族にも会うことができた。このガイドに出会えなければ、きっとのっぺりとした3日間だっただろう。そう考えると、何かの形で感謝を表したいという気持ちが湧いていたのである。あとは二人がどう考えているかだ。

13時過ぎにガラム・チャシュマという温泉に着いた。ここはビビファティマのような山岳温泉ではなく整備された大型スパだ。大露天風呂と室内風呂の2種類があり男女入れ替えなのだが、行った時は残念ながら男性は室内風呂だった。泉質は白濁した硫黄泉でワハーンにおけるバリエーションの豊富さに驚いていた。湯巡りという楽しみ方もできるだろうと思った。風呂上りには、我々はレストランで揚げた羊肉とスープを食べていた。どちらもとても美味しかった。ワハーンの緊張感がすっかり弛緩しきって、温泉旅行に来ているような気分になっていた。

レストランでドライバーが席を外した時、二人がおもむろに僕に話し掛けてきた。

「彼にいくら払おうかしら?」

どうやら彼らも同じことが気になっていたようだ。僕は自分の主張を控えて、80ドル90ドル100ドルの3択について説明した。100ドル払いたいというのは僕の我儘だから、もし90ドルにしようと言われたらそれに従うつもりだった。僕は二人の言葉を待った。

「彼は単なるドライバー以上のことをしてくれたから。一人100ドルでどうかしら?」

間髪入れずに明快な答えが返ってきた。僕は素直に嬉しかった。素晴らしい体験だったという共感を得られたことが嬉しかったのだ。

「僕もそれがシンプルでいいと思う。」と笑顔で返した。

チップで一番大切なのは、払う人の意見が一致することではないだろうか。そこに食い違いがあるということは、感謝するポイントがずれているということでもあり、それは小さくない価値観の違いを表していると思う。あと、よくあるピローチップを払うかどうかも一般論としてはともかく、一緒に旅をしている二人がするのは不毛な議論だろう。払わなくてはならないという意見と払う必要はないという意見をぶつけて正解なんて出っこない。だから自分の意見をぐっと飲みこんで相手の意見に合わせるの一択だ。

でも不思議なのが、外国人用の日本ガイドブックに「仲居さんにはお心づけを渡しましょう。ただし必ず封筒やティッシュで包むこと。札をそのまま渡すのはNGです」なんて書いてやしないし、心づけを渡すかどうかで外国人カップルが口論していたらあからさまに滑稽なのに、9割方払わないピローチップを絶対的マナーだとするのはなぜだろうか。

 

温泉には食事も合わせて2時間以上長居してしまい、ホログに着いたのは5時過ぎだった。ホログは久々に町らしい町だった。