こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

中央アジア51 ホログからドゥシャンベへの道

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2011年8月6日

今日はタジクの首都ドゥシャンベを目指す。移動手段は飛行機あるいは車だ。飛行機で45分、車で15時間だから迷わず飛行機を選択したいところだが、ドゥシャンベ-ホログは小型機が1日1便飛んでいるだけなので予約がなかなか取れない。僕もいちおう名前を書いたのだけど314番目だった。一度で100人乗れたら3日待ちかと考えたものの、いざやって来た飛行機が20人も乗れるか乗れないかくらいの小型機だったのを見て断念した。バザールで車を探すことにしたが、早朝の乗客とドライバーがマッチングする時間帯を逃したせいでなかなか車が見つからない。幸いなんとかオペルの5人乗りワゴンが残っていた。ただ5人目は待てども現れず、結局4人300ソモニで出発した。

ホログに来るまでのワハーンの道はさほど悪くなかったので高をくくっていたが、ホログからドゥシャンベの道は予想外の悪路だった。あちらこちらにごろごろ転がる石。路面を覆う赤い砂。対向車が通るたびに激しく巻き上げられる土埃。対岸アフガン側から今にもこちらに倒れてきそうなくらいにせり出した岸壁。先の見通せないきついカーブの連続。車内に流れる大音量の音楽。若いドライバーはこの悪路を自分を鼓舞するように猛スピードでかっ飛ばす。対向車が現れても絶対にアクセルを緩めようとせず、逆に加速しようとするのだ。ずっと心臓がバクバクしていて瞳孔が開いているのが自分でも分かるくらいだった。僕のドライブ人生の中で最も血沸き肉躍る経験だったと断言できる。しかしこの悪路をそんな無茶な運転で通せるはずはなく、石を踏んでタイヤがパンクしてしまった後は、トーンが下がって通常運転に戻ったのだった。

昼食休憩をチャイハネで取った。チャイハネというのは直訳すると茶館だが、中央アジアの伝統的なスタイルのレストランである。絨毯が敷かれた台座が屋外にずらっと並び、それぞれに食卓が置かれている。靴を脱いで台座に上がりお茶と料理を頂くスタイルだ。僕はショルポという羊肉とジャガイモの煮込みスープにした。中国のバス休憩のように、15分で食事とトイレを済ませて慌ただしく出発するようなことはない。お茶を飲んで、ぺちゃくちゃとお喋りをしながらゆったりと時間を楽しむ。こうしたスタイルのランチそのものがとても贅沢だと思った。

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さて17時にカライフムという大きな分岐に差し掛かった。ここでパンジ川を離れて山を登っていく。川の水は灰色から透明になり、これまでの赤茶色の風景が緑に変わる。こういうクリアカットな景色の変化を目にすると、地球を移動しているという実感が湧く。川沿いの緩やかな道を登っていくと標高3252mのサギルダシュト峠に至る。緑の山並みが幾層にも重なり合う雰囲気の良い高原だ。ただ丁度日没の時間と重なってしまったせいで、西日が眩しくて道が全く見えなかった。隣のドライバーが目を細めてなんとか道を踏み外さないように頑張っていた。

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峠を下った日没後はひどい道が続いた。デコボコが多くどこが本当の道なのかが分からない。光が無いから手探りで進む。間違っては引き返す。時には川を渡ることもあった。僕は、本当はとっくに道を間違えているのではないかと疑いを持ったくらいだ。更に面倒だったのが異常に多い検問だ。毎回荷物を調べられるから時間を取られてしまう。そして夜10時頃には故障したワゴンとすれ違い、修理の手伝いをした。こうなると前半飛ばしすぎたのが何だったのかと思うくらいにスローダウンしてゆっくり走るようになっていた。さすがのドライバーも疲労が限界に達して、深夜3時にチャイハネの台座を見つけると車を止めて全員で雑魚寝をすることにした。外は結構寒かった。無理に眠ろうとはせず、セーターを着て日の出を待った。

2時間の仮眠を取って5時に出発した。日は昇りあたりは既に明るくなっていた。道路は格段に良い。ドゥシャンベ入りしたのは朝7時だった。20時間のドライブはさすがにきつかった。