こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

中央アジア47 とりとめもなくTRPVについて語ったこと

チキンスープの夕食後、まだ寝るには早い。他愛のない雑談を交わした。なぜか、「唐辛子に殺菌効果があるか?」という旅行者が食中毒の予防策として考えそうな話題に及んだ。

 

唐辛子を辛く感じるのは、辛み成分カプサイシンに対する受容体TRPV1を人が持っているからである。

鳥類は受容体を有していないので辛さを感じない。実際、唐辛子は鳥に食べてもらうことで、種を拡散する戦略を取っている。

タイでは唐辛子を多用するが、ベトナムのフォーには殆ど入れない。本当に殺菌効果があるなら同じ熱帯国であるベトナムでも真似るはず。

殺菌効果があるかどうかの直接証拠は韓国のキムチである。大量の唐辛子によって乳酸菌が死滅するという悲劇が全然起こっていないことが、細菌力のなさを物語っている。

唐辛子は虫除けにはなるがバクテリア除けにはならない。

辛い物が好きな人は、寒い冬は体を温め、暑い夏は暑気払いになるという。しかしその理屈は、夏は開放的な気分になって、冬は人肌が恋しくなるという言い回しと同じだ。つまり単に唐辛子が好きなだけだ。

だいたいこんな感じの説明をした記憶がある。

こんな理屈っぽい話に耳を傾けてくれる理屈っぽい同行者で良かったと僕は思った。

ワハーン回廊からは脱線するが、2021年のノーベル医学生理学賞がTRPVの発見に対して与えられたのを祝して書き記した。