こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

中央アジア7 トルファン3

2011年6月30日

早々とトルファンを発ったチェコの青年と入れ替わりに部屋にやって来たのは、背の高い20代後半くらいの西洋人だった。「ハロー」と声を掛けると、彼は少し間を置いて頷いた。彼が何も喋らないことに、僕は少し違和感を覚えた。そして「どちらからですか?」と続けると、「どちらからですか、どちらからですか・・・」と呟いてから、ぼそっと「フランス」と答えた。それから次の質問を遮るように「イングリッシュ ノー」と首を振った。
彼の経歴は興味深かった。フランス本国の大学を出てから四川省成都に留学し、そのまま現地で働いているのだという。今は金持ちを相手にフランス産ワインを販売しているそうだ。成長著しい内陸のメガシティ成都には、消費意欲が旺盛な億万長者が溢れているのだろう。競合相手も今のところ多くはない。教科書に出てくるようなブルーオーシャンの実例だ。マーケティングの王道を行っていると思った。
「値段は重要じゃない。安くても美味しいかどうかだよ」とたどたどしく語っていたのが印象的だった。彼自身は安いワインしか飲まないと言う。高級ワインを売る人の考えが、そういうものだということがおかしかったのだ。
しかしなぜ中国語が堪能になって英語が喋れなくなったのだろう。似たような話として、中国に留学している日本人は英語が不得手な印象がある。(語学が苦手な僕が言うことではないが。)それも片言すら無理という人が少なくない。目の前のフランス人もそうだった。彼は、一度中国語で文章を組み立ててから、記憶を絞り出すように英単語を発していた。中国語が頭を占拠して、英語が追い出されてしまった結果というべきか?
人間のキャパは有限だから、外国語を勉強する時は、どの言語をどの程度の深さまで学ぶか事前に決めておいた方が良いのかもしれない。旅行だけなら、最低限必要な単語をしっかり覚えるのがいいと思う。ただそうは分かっていても、ペラペラになりたい願望、が学習の足を引っ張るのだが。

トルファン賓館の三日間で、個性的な3人の旅行者に出会い刺激を受けた。こうして内からまた旅を再開しようという気持ちが湧いてきた。