こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

中央アジア2 蘭州

2011年6月19日 

中国のほぼ真ん中に位置する標高1500メートルの高原都市蘭州は、黄河シルクロードが交わる交通の要衝だ。東の中原と西域を結ぶと同時に、南の山岳地帯へ分け入ればチベットへの入り口に繋がる。
蘭州駅の背後には高さ600mの茶色い山が聳え、ちょっとした迫力がある。空気は乾燥し、やや酸素が薄く感じる。到着した日は良く晴れ、気持ちよく青空を仰ぐことができた。日射しは強く、6月としては暑く感じる。じっとしていても、背中にじっとり汗をかく。
僕は駅を背にして歩き出し、繁華街へと向かった。街中には、髭を生やし帽子を被ったムスリムを多く見かける。彼らが営む羊肉串の屋台があちこちに立ち、スパイシーな煙が鼻を刺激する。中国の真ん中にして、もうすでに中国ではないエキゾチックな雰囲気が漂っている。

街を抜け更に北へ進み、黄河を渡ってロープウェーに乗ると白塔山の頂上にたどり着く。ここから蘭州の市街地が一望できる。30階近い高層マンションが、盆地に密集する格好でニョキニョキ突き出している。空気はうっすら濁って、駅裏手にあった山は霞んで見える。
蘭州は中国でも最も大気汚染のひどい街の一つとして知られ、2012年度調査では北京を抑えて堂々の一位に輝いた。四方を山で囲まれ空気が滞留しやすい地理的要因と、緑が少なく雨の降らない気候的要因がなせるわざだと思われる。300万人以上が盆地にひしめくこの街は空気がまずく、どこか息苦しさを感じる。

蘭州名物はなんといってもラーメンであるが、日本のそれとはちょっと違うものであることに留意が必要だ。蘭州のラーメンは牛肉麺(ニューローミェン)と呼ばれ、牛骨を長時間煮出したスープがベースになっている。投入する麺は小麦粉にかん水を加えてコシを出したもの。注文を受けると生地のたねを棒でこねて延ばしていき、ある程度の長さになると半分に折り曲げ元の長さになるまで手で引っ張る。こうして2倍、4倍、8倍、16倍、32倍と段々長く細くなっていくと麺の出来上がりだ。いわゆる中国のラーメンと聞いてイメージするアレである。そこへ具の肉片と大根を入れて、ラー油をかけ最後に香草を散らすと出来上がり。色んなスパイスが効いて、見かけよりも味わいはすっきりとしている。これで一杯5元(65円)だから異常に安い。しかし何より感心したのは、職人の手際の良さと分業体制だった。次から次へと客がやってくるのに、待ち時間ゼロのキャッシュオンデリバリーが成立しているのだ。中国の飲食業界ですごいと思うのは、こういう大型店舗のプラットフォームがしっかり確立されていることだ。
ただ日本の旨みの強いラーメンに慣れている舌には、何か物足りなく感じたのは否めない。それが絶対的味覚なのか慣れなのか環境なのか、今となっては分からない。最初に馬子禄で食べた時の感想をもっと細かくメモに残しておけば良かったと後悔している。