こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

タイ1 ナコンラチャシマ

2011年4月1日

ジャヤバラマン7世の時代、クメール王朝はタイ東北部、ラオスに及ぶ大帝国であった。もし貯水湖を備えた寺院をタイで見かけたならば、それはクメール朝の遺構である可能性が高い。
少し時代は遡るが、プレアビヒアにしても本来の参道は、タイ側からの巡礼を前提に作られている。それを、カンボジア側から崖をよじ登り、岬の先端に立って参拝しているのが現状なのである。
タイ東北地域はイサーンと呼ばれる貧しい農業地帯である。とは言え、町の雰囲気はむしろ明るい。また不思議と日本人と顔つきのよく似た人々が多いのも特徴だ。ナコンパノムというメコン川沿いの町を訪れた時、現地の若い女性のグループを見て日本の女子大生がツアーで来ていると勘違いしたくらいである。
イサーン料理はバンコクでも食べられるが、現地テイストはかなり違うものである。日本でも人気のソムタムは、小エビとナッツを散らしたちょっと小洒落た甘酸っぱい青パパイヤサラダであるが、イサーンで食べるそれにはエビもナッツも乗っていない。また辛さも強烈で、全てを食べ終わる頃には疲労困憊でメインディッシュに到達できなくなっている可能性が高い。
鶏の丸焼きガイヤーンに関しては、コーンケン産が純正なガイヤーンであり、バンコクで食べられているのは別の料理と断言していい。なぜなら鶏と調理法が全く違うからだ。コーンケンで使われるのは、khao suan kwang産の非常に皮が薄く身が柔らかい地鶏と決まっている。それを独特なホーロー鍋でじんわり焼き上げるのが本来のガイヤーンなのだ。パリパリのクリスピーな皮、むね肉から足の爪先までどこを食べてもジューシーなガイヤーンを一口食べれば、鳥料理の概念が変わると言っても過言ではない。なおイサーンではガイヤーンを手づかみで食べ、竹籠に入ったもち米も手でつまんで食べるが、注意しないといけないのは、この手食はイサーンでのみ許されるということだ。もしバンコクで同じように食べていたら、周囲からの視線を集めることになるのは間違いないし、KFCもフォークで食べるのがお作法なのでお忘れなく。
ちなみに僕が食べたレストランは、ローカルバスターミナル西のTepharak通りをPrachasamosonから北に1km上がった丁字路突き当りのMae benというところ。Tepharakを北上する途中、左手に有名なrabeabもあるので食べ比べてみるのもいいでしょう。ただし3時頃に行くと売り切れていることがあり、かと言って11時ごろだと前日の作り置きが出てくる可能性があるので、12時から13時頃がベストタイムかもしれません。

さてバンコクから北東へバスで4時間揺られ、ナコンラチャシマの街にやって来た。コラートと呼ばれることも多いこのイサーンの玄関口は、今やタイ第2の都市に成長し、ショッピングセンターで買い物をしているとイサーンであることを忘れてしまいそうだ。米麺が有名だそうだが、タイで麺を食べるのが初めてなので違いはよく分からない。ただベトナムカンボジアと比べると麺にコシがあって、炒め麺にせよ汁麺にせよたくさん砂糖を入れることにびっくりした。いずれ健康ブームがタイに到来した時、この炭水化物への糖添加は見直されるのだろうか?
さて僕がイサーンに来たのには二つ理由がある。一つは、タイ側のアンコール遺跡を見ること。そしてもう一つはタイ側からプレアビヒアを参拝することである。ひとまず、コラート近郊のピマーイを最初の目的地に定めた。