こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

ハイフォン ベトナム縦断5

2011年2月20日

6時半に起きて街をぶらっとしてみる。この時間はまだバイクのいない静かな歴史あるハイフォンが健在だ。汚れが残るシミだらけの通りもよく目を凝らせば不意にフランス風の建物があちらこちらに現れる。黄色い立派な郵便局、やや色褪せた朱色の博物館、赤いうろこ状のとんがり帽子の屋根をかぶった建物など個性豊かでなかなか味わい深い。中心から少し離れたところには灰色に僅かな藍を含んだモノトーンの大教会が、ここだけは雑踏と無縁だと言わんばかりに聳える。
ただそれも束の間で7時半には喧騒が目を覚ます。

次の予定は、ハロン湾に船で行くはずだったのだが、ここハイフォンでもフェリー会社が見つからない。町のツーリストインフォメーションで聞くも、存在すら知らないと要領を得ない。いったいどうなっているのか分からないが、ここは諦めてカットバ島へ向かうことに決めた。

朝にハロン湾へのフェリーがあればそれに乗るつもりだったが、することがなくなって昼からビールを飲んだ。移動続きで行く先々での失望も多く、ほとほと疲れ果てた。旅は挫けさせることがたくさんある。想定した通りに事が運んでほしいという気持ちが強いと失意が生まれる。しかし無計画もまた行き詰まりのもとになる。どこか中間に最適なこだわり具合が存在するのだろうか?

ホテルの部屋へ戻ると倦怠感で起き上がれなくなった。7階の新しい部屋は床も壁もぴかぴかで、なによりシーツが清潔で落ち着く。窓を開けると遠くに町のざわめきが聞こえる。砂糖入りの甘いペットボトルのお茶を飲んで喉を潤した。怠惰な自分への罪悪感と慰めを繰り返しているうちにまどろみに落ちていた。
夕方になってようやくむっくりと起き出して、昨日と同じ鉄板焼き屋台に出掛けた。昨日ほどの新鮮な驚きはないが、それでもやっぱり美味しい。このタレをそのまま日本に持って帰りたい。日本でアルコールを殆ど飲まない僕だが、昼・夕と続けてビールを飲むと不快な自責から解放された。
帰りにハイフォン博物館に寄った。別に興味があったわけではないが、この時が唯一開いていたからだ。火木の朝8時から10時半、水日の夜19時半から21時半と奇妙で不規則な開館時間の理由はどうしても思いつかなかった。
ホテルの部屋から徐々に暗くなっていくハイフォンを見下ろしていると、旅に出たという実感がようやくにして湧いてきた。