こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

ハイフォンへ ベトナム縦断4

2011年2月19日

北部ベトナムで外せないのは世界遺産ハロン湾である。
ガイドブックによるとモンカイからハロン湾に向かうフェリーがあると書いてあったので、昨日はフェリー会社ムイゴックをモンカイじゅう探し回った。しかしとうとう見つからず、ハイフォンまでバスに行きそこから船でハロン湾を目指すことにした。
ハイフォン行きのバスは特に予約していなかったが、バスステーションに行ってみると時刻表はあってないようなものだった。何台かのミニバンが待機していて客が一定集まると出発する。僕の乗ったのは8時30分に出発した。ハイフォンまで100kドン。このミニバスに定員は事実上ない。開けっぱなしのスライドドアから逞しい乗務員が身を乗り出し、大きな声で「ハイフォーン、ハイフォーン」と叫びながら客を拾っていく。客をたくさん乗せればその分利益になるらしく、行く町々で隈なく走り回って客を探す。最初客は5人だったので快適だったが、すぐに満員以上になった。町から町への移動は猛スピードだが路上に客を見つけると急停止する。このストップ&ゴーの繰り返しが結構疲れる。ハイフォーンと叫ぶ声が響き、ドア全開で荒い運転をされてはまったく寝るどころではなかった。
さて3時間半ほど走ったところで奇岩群を通過した。ひょっとしてこれがハロン湾?と思ったがそのまま通過してしまい、14時にハイフォンに到着した。


ハイフォンはベトナム第3の都市であり、北部ベトナム最大の港湾を擁する。またベトナム戦争では米軍の激しい砲撃を受けた歴史がある。
僕はハイフォンにある種のイメージを抱いていた。旧植民地時代の街並みが残り、街路樹生い茂る美しい街。まるでヨーロッパのような優美な場所を勝手に思い描いていたのだ。期待に胸を膨らませ、バスから降りると街中へと歩を急いだ。
バイクと自転車が多く、歩くのには苦労する。モンカイにせよハイフォンにせよ静けさがベトナムの都市を支配することはないのだと改めて感じていた。
コロニアルな街並みを探しながら、がやがやした通りを歩いていた。通りの名前はディエンビエンフー通りという。ベトナムには通りに英雄の名前を付けることが習わしとなっているため、色んな町に同じ名前の通りが存在する。ディエンビエンフー、レロイ、チャンフー、などなど。英雄を冠した通りにしては広くはない道をたくさんのバイクが疾走していて雰囲気も何もない。どこに僕の求める街並みがあるのだろうか?そのまま東へ東へこの通りを進むと、ほどなくして街の中心から離れてしまった。振り返って地図で位置を確認してみた。そして、今歩いてきたぱっとしないディエンビエンフー通りがまさしくメインストリートだと知った時、僕は正直がっかりした。
さてガイドブックによると、この通りに「コメルス」という旧植民地時代の建物を生かした、貧乏旅行者にも高い天井とバスタブを10ドルで提供してくれる個性的なホテルがあるという。僕はひそかに優美な町の優美なホテルで寛ぐというのを楽しみにしていた。しかし残念ながらコメルスは改修中のため休業していた。ああ、ハイフォンに抱いていた幻想はきれいに打ち砕かれた。
ハイフォンのホテルは高い。モンカイでの1泊800円を基準に探そうとしたが、安いホテルでも30ドル程度はする。この街に泊まるのはビジネスマンが主なのだろう。路地を一本入ったところの「Bao Anh」という新しいミニホテルが500kドン(2000円)と一番安かったのでここに決めた。ただそれでも高すぎると思ったので、安くならないか聞いてみると「いくらなら払えますか?」と逆に質問された。一瞬答えに迷ったが、単純に定価が500なので「400kドン」と言ったらあまりにあっさり快諾してくれたので、もう少し安い値段を最初に言っておくべきだったと後悔した。

土曜で銀行が休みだったので、ホテルで両替してもらってから町中を散策した。靴屋が不思議なほど多い。お洒落さんが多いのだろうか?中国人向けの中華料理店と按摩屋が目に付くが、日本料理店もあるしスーパーにはワサビなどの日本食材も置いてある。日本人は見かけなかったが、駐在の人もいるようだ。
ディエンビエンフー通りにはいくつか立派なカフェがあるが、モンカイで屋台や露店に馴染んでしまった身には入りにくかった。行儀のよさがよそよそしく感じられて、モンカイが無性に懐かしくなった。

夕食はフォーを食べようと考えていたが、適当な安食堂はなさそうだったので、歩道に大きな露店を展開している鉄板焼きのお店にした。メニューは「Tit bo(牛肉)」という焼き肉の1種類。(boは牛肉のこと。ちなみにGaは鶏肉のことだ。)
ジンギスカン鍋のような鉄鍋を固形燃料で熱して、下味をつけた肉とニラ、タマネギを焼いていき、調味料、絞ったライム、塩、味の素、刻んだニンニク、香草を付けて食べる。口に入れると肉・調味料の旨み、ニンニクの刺激、香草の匂い、ライムの酸味が口の中ではじける感覚で抜群にうまい。料理でやってはいけない禁じ手を犯しているような、今まで味わったことのない美味しさだった。しかもバケット3つと合わせて66kドン(260円)とリーズナブル。ハイフォンの失望を埋め合わせてくれるのに十二分だった。