こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

南寧からモンカイへ ベトナム縦断1 メコン編 2011年2月17日

2011年2月17日



6時30分のアラームで目が覚めた。シャワーを浴びて7時30分にホテルを発った。
朝食はバスターミナルのケンタッキーで、ピータン粥と揚げパンのセット(6元=80円)、それから卵とキクラゲの粥(8元=100円)を頼んだ。KFCだけれども朝食セットに揚げ鶏はない。けど、中国に来たらぜひ一度はKFCの朝粥を。元気になれる一杯です。

バスは9時発。窓が曇って外は見えないが、鄙びたところへ向かっていることは風景から分かる。1度の途中休憩を挟んで12時前に東興に到着した。
わざわざ見るものは何もない小さな町だが、比較的最近に整備されたらしく整然としている。国境の町ならベトナム国境への標識が出ているだろうと思ったが残念ながらない。言われなければ国境の町と気付かない不親切さが中国らしい。一緒のバスで来た人達に付いていけば何か分かるかと思ったが、彼らもベトナムに向かう訳ではなさそうだ。本当になんの目印もないので自力で行くことを諦め、バイクタクシーのおじさんに声を掛けた。「ベトナム」と言ったら頷いたので国境まで乗せてもらった。すると目と鼻の先だった。

国境には小さな川が流れていて、友好橋という名の橋がかかっている。橋の手前に中国側の、向こう側にベトナムのイミグレーションがある。出国、入国とも特に問題なく、今回初となる陸路での国境越えを経てベトナムへ入国した。

ゲートを出ると何もない道がまっすぐに延びている。この道を南へ500メートル進むとT字路になっていて右折すると商店が並ぶメインストリートに出る。このメインストリートの西端はロータリーがあり、その対側に埠頭のような広いスペースがある。スペースの中心には八角形の形をしたモンカイマーケットという建物、傍らに屋台のテントがずらっと並ぶ。町のおおまかな概要はそんなところで、中心だけなら10分もあれば歩いて回れる。
このベトナム側国境の町の名前はモンカイといい中国語では「芒街」と書く。芒はススキの意味だが、ススキらしきものはどこにも見かけない。中国語において地名の「あて字」には意味が込められていることが多いが、これは何を意図したものだろうか?
さて国境付近で両替出来る場所がなかったので両替商を探していた。国境の町だから中国元がそのまま使えるかと期待したが、どこの商店も人民元は受け取ってくれない。そこで銀行で両替しようとしたら、ちょうど昼休みでシャッターがまさしく降りるとこだった。銀行なのにしっかり昼休みかいなと憤慨しそうになったが閉まってしまったので仕方ない。近くに露店の両替屋が一軒あったので中国元をベトナムドンに替えた。20元(260円ほど)を渡して6万ドンになった。ざっくりしたレートだな。1万ドンが40円ちょっとというとこか。
この小銭を持って近くのカフェで時間を潰すことにした。町はとにかく落ち着きがなくせわしないが、入ったカフェはうって変わって瀟洒な店だった。ワインレッドで統一された壁、大理石風のテーブル、籐の椅子、シーリングファン。まるでリゾートみたいだと思った。僕はカフェスアダーというアイスコーヒーを注文した。2万ドン(=80円)。これが初めてとなるベトナムコーヒーとの出会いだった。
しばらくして店員が持ってきたものを見て、僕は相当に戸惑った。アルミカップを乗せた小さな陶器のカップ、氷だけ入ったグラスが運ばれてきたのだ。どこにもアイスコーヒーはない。注文をしくじったのだろうか?
アルミカップの蓋を開けると、アイスコーヒーのはずが熱湯で抽出されつつあるコーヒーだった。アルミカップを持ち上げると、陶器の底には大量のコンデンスミルクがすでに入れられ、ぽたりぽたりと落ちるコーヒーのしずくで淡く茶色に滲んでいる。
僕はこの構成が理解できなかった。そこで、ある程度抽出しきったところでアルミカップをどけて、デミタスコーヒーのような小さなカップでちびりちびりとコーヒーを嗜んだ。強い風味とたまらない甘さが口いっぱいに広がった。
こうして初めてのベトナムコーヒーは僕に強烈な印象を残した。そして氷のグラスは手を付けずじまいだった。
ちなみにベトナム最初のこの店が、その後訪れたあまたあるカフェの中でも最も洒落た店だったのはなんとも皮肉なことである。


14時になると銀行が午後の営業を再開した。14時きっかりに銀行に行った。両替レートは60ドルが1,200,000ドン。当時の1ドルが80円程度だから1000ドンが4円になる。ややこしいので1kドンが4円として換算してください。
ここの銀行はドルの両替に慣れていないのか、何人かで相談しながら業務を進めたため少し時間がかかった。しかしながら行員の女性はとてもフレンドリーだった。彼女はかなりスタイルが良く、信じられないくらい短いスカートを履いていたが、キャスター付きの椅子に座ったまま床を蹴ってスイスイと行内を縦横に移動していた。誰も何も咎めるでも気にする様子もない。なんて自由な職場なんだろうと思った。
銀行を出た後、埠頭の屋台で鳥乗せご飯20kドン=(80円)を食べた。この安さなのにとても美味しかった。僕はこの町が少し好きになった。