こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

中央アジア44 ランガル ワハーン回廊 パミールハイウェイday4

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2011年8月4日

ランガルの標高は2800m。これはカラクル~ムルガブ~アリチュルと3,500~4,000mの高地を通って来た後には低く感じる。感覚的には標高3,000mあたりにしきい値のようなものがあって、それより下がると息を吸い込んだ時に空気の濃さが実感できるし、鼻を通る空気の湿り具合もはっきり分かる。体も明らかに軽くなっているのを感じていた。もう高山病の症状はきれいに消失していた。

そのトレードオフとして、夜空の星の迫力はやや落ちる。もちろん星は十分すぎるくらい夥しく瞬いているのだけれど、圧倒されるようなすごみは感じられなくなる。ただそれも含めて、人が生活する場に戻ってきたような安堵感を僕は抱いていた。宿は食事込み15ドルの民泊ゲストハウスだった。着いた日の夕食はトムヤム風ラーメンとチャーハンというシンプルなメニューだったが、このごく普通の食事がなんだか懐かしい気分にさせるのだった。

翌朝6時半に起床し、村の周りを歩いた。

ランガルは東西を流れるワハーン川と北から南下したパミール川がT字状に合流する場所である。広大な三角州にはパミール川とワハーン川とが複雑に混じりあい、規則性のない曲線をいくつも描いている。そしてワハーン川の対岸には6000メートルを超えるヒンドゥクシュ山脈が壁のように立ちはだかる。

高い山に囲まれ、村に陽は射し込まない。ヒンドゥクシュ山脈の上の方だけが朝日に照らされ眩しく光を反射している。三角州を開墾した麦畑はちょうど収穫の時期を迎えて、かくれんぼが出来るくらいの高さまで実っていた。風が吹くと一斉にさやさやと音を立てる。空は一面の水色で、彼方に目をやるとわずかに霞んでいた。空気は涼しくすがすがしい。立ち止まると、シャツにかいた汗が少しひんやりと感じた。

8時近くになってようやく山の向こうから太陽が現れ、村を照らし始めた。麦の穂先は黄金色に輝き、壁のように見えたヒンドゥクシュの山々は光を浴びて重層的な姿を現し始めた。小鳥が賑やかに音を立て始め、朝の訪れを村に告げているのを聞き届けた僕は宿へ戻り、朝食のミルク粥を食べた。緑豊かなオアシスにやって来たという高揚感が湧いてくるのを感じていた。

ところで話変わって、「旅行人ノート(2006年版)」によれば、ここランガルと対岸アフガニスタンを結ぶ橋が存在していたという。「アガハーン財団の支援で新たな橋に架け替えられ、越境地点になるらしい」とはっきり書かれている。少なくとも2006年のある時点では、アフガニスタンとの往来があったようだ。しかし橋は何らかの理由で解体され、2011年にはなくなっていた。再整備され旅行者が通れるようになる日が来るだろうか?