こふん日記

2011年の旅行記 メコン編、中央アジア編、チベット編

中央アジア27 ビシュケク

ビシュケク中央アジア諸国のなかで、感覚的には間違いなくもっとも日本人旅行者が多い街だ。一番の理由は、キルギス入国に観光ビザを要しないからだろう。ビザ取得が煩雑でtime-consuming旧ソ連中央アジアにあって、このキルギスのビザ運用は奇跡的とも言える。そんなこともあって、ビシュケクは周辺国のビザ集めをするためのベースになっている。この小国の首都に日本人がたくさんいるのは不思議な感じがしないでもない。

 

ビシュケクには、観光資源と呼べるものは広場と博物館くらいしかない。中心にツムというソ連時代から続くデパートがあり、街の機能は四方1㎞に集中している。ちなみに、ツム(TsUM)とはCentral universal magazin(マガジンは商店)のロシア語の略で、他の旧ソ連共和国の首都でもよく見かけるものだが、ここのツムは社会主義様式の古臭い趣のする外観で、どうもいただけない。アスタナ、アルマトゥイ、ビシュケク20年ずつ時代を遡っているような感覚にとらわれる。ただ、ソ連時代の都市計画に基づく無駄に大きな通りがもたらす開放感、それから緑の多さは中央アジアの都市の中でも群を抜いている。陽射しは強いが湿度は低く、爽やかな気候である。アルマトゥイのような人と車の渋滞による騒々しさはなく、程よい賑わいが心地よい。

 

ツム1階のサンドイッチ屋でスモークチキンのサンドイッチとクレープを買い、通行人を観察しながら時間を潰した。サンドイッチはその場でトーストしてくれる。水分が欲しければ、至るところに「shoro」と書かれたジューススタンドがあり、レモンティーと塩気の強いヨーグルトを売っている。レモンティー200ml10円くらいと安い。サンドイッチもたしか100円くらいだったはずだ。物価が安くて過ごしやすい街ではある。旅行者が口にする「ビザのため」という言い訳は、あくまで「沈没」のための口実であって、本当の理由は違うところにあるのだろう。両替屋も至るところにあり、容易に換金できる。また、1ドルを売買する時のレートがそれぞれ44.25ソムと44.65ソムなので、手数料も0.45%程度ととても安い。中国でトラベラーズチェックを現金化する手間と時間を経験した後では、このストレスフリーのありがたみがよく分かる。

 

長期旅行者に人気のある街というのは、こういう都市機能がマグネットのように人を引き付けているのではないかと思う。